Marthe Henry / マルト・アンリムルソーの名門ボワイヨ家の血を引く、新世代が描くテロワールの純粋な表現!ムルソーを拠点に活動するマルト・アンリは、ブルゴーニュの新世代を代表する女性生産者の一人である。ドメーヌはムルソー村の中心核に隣接する東側エリアに位置し、Domaine Comte Lafon まで約100m、 Domaine Rougeot も約500m圏内にある。トップドメーヌが同一の生活圏・動線上に凝縮して存在する点は、この村特有の密度の高さを端的に示している。ワインジャーナリストとして長年ブルゴーニュの造り手や畑を取材してきた経験を持ち、本格的にワイン造りの道へ進むにあたり、ボーヌのCFPPA(農業職業教育機関)で栽培・醸造の基礎を学び、在学中からドメーヌでの実務経験を積んだ。その後シャサーニュ・モンラッシェのドメーヌ・ジャン=ノエル・ガニャールにて約7年間にわたり実務経験を積んだ。畑仕事からセラー作業まで日常的に関わり、ワインにおける収穫判断、圧搾から発酵、熟成に至る一連の流れを身体的に習得している。その後も一か所にとどまることなく、ムルソーのドメーヌ・ルージョでの勤務を通じて、よりテロワール志向の造りと村名ワインにおける精度の考え方を学んだ。そして、2017年に自身の名を冠した小規模ネゴシアンとして独立。信頼関係のある栽培家からブドウを購入し、人的介入を極力抑えた自然なアプローチで醸造と熟成を行うスタイルを選択した。醸造はムルソーの実家セラーで行われ、現在の生産量は年間およそ3万?3.5万本規模に達している。ネゴス主体でありながら、セラー運営、熟成設計、瓶詰に至るまで一貫して自身の管理下に置かれている点が特徴だ。彼女の家系はムルソーの名門ボワイヨ家に連なり、祖父ピエール・ボワイヨが所有していた畑を現在も家族が保有している。それらの畑は現在他の生産者に貸し出されているが、将来的に自ら耕作することを見据えながら、ムルソーのセラーで醸造を行っている。彼女が一貫して最も重視しているのは、ヴィンテージの特性や、テロワールの違いが明確に伝わることだ。畑ごとに醸造法や熟成手法を変えて味わいの向上を図る生産者は多いが、彼女はそうした手法が結果として味わいの均一化を招き、人的介入の増加によってテロワールを無効化してしまうと考えている。そのため造りはあくまでシンプルに保ち、違いは畑とブドウに委ねる姿勢を貫いている。ブルゴーニュ専門誌Burghoundは、比較的控えめなアペラシオンでありながら高い品質のワインを生み出している点を評価し、「もっと広く知られるべき生産者」と評している。生産量はまだ少ないものの、透明感のある果実味と石灰質由来のミネラル、そして精緻なバランスを備えたワインを造り出すマルト・アンリ。ブルゴーニュの新しい世代を象徴する存在になっていくに違いない。